機が熟す、という言葉が好き。



今夜一緒に食事をした人との縁も、まさにそうだったのだろう。

その人オーさんとは、もうはっきり思い出せないくらい昔から職場でよく顔を合わせていた。でもお互いに時間に追われていたせいで本当に何年間も挨拶するだけのコミュニケーションしか取れず、私などはオーさんの顔と名前が一致したのがつい最近のことだった。

お互いに知っているのは、顔と名前とどんな仕事をしているかということだけ。けれどずっと同じものを感じていた。そんな私達が今夜、共通の友人の小さな架け橋を渡って歩み寄り初めてゆっくり話をしたのだけれど、2人ともまるで何もかも良く知っている古い友人のように打ち解けた。初対面の人と過ごす最初の数時間のように様子を見ながら慎重に開かなければいけないドアなど、ひとつも無かった。

私は彼女のことを、生きる方向が同じ人だと確信していたし、彼女も私を深いところで共感できる同志だと直感していた。

私達は、一体いつの間にお互いをそんな風に思っていたのだろう。

どんな情報を元にして、心の奥に大切に持っている信念のようなものを、共感し合えたのだろう。

きっとひとつは、お互いの仕事からだ。どちらも直接関わったことはないけれど同じフィールドで働いているからモチベーションと質の高さは察しがつく。仕事に入る前や終わったあとの表情はそれを如実に語ってくれる。

もうひとつは、こっちの方が決め手になるのだろうけれど、何気ない挨拶を交わす時の佇まいと言うか・・・雰囲気。オーラみたいなもの。それは霊能者やスーパースターだけのものではなく、誰もが毎日他人から受ける微弱な振動。意識してもしなくても、この積み重ねは自分の体に確実に刻まれてゆく。そして臨界点を越えると頭がはっきり自覚するのだ。


おもしろい。

人と人って・・・本当に興味深い!



さてオーさんの提案で入ったインド料理屋。カレーもナンもタンドリーチキンもサラダも、ぜーんぶ美味しかった。

食べながら、一応の確認作業のように、お互いの経歴や家族や毎日の生活全般について話すのは何だかおかしな気分だった。ましてや年齢や既婚か未婚か、テレビ番組とか芸能人の話などは興味の対象外なので一瞬で終わり。それよりも今をどう生きているか、これからどうなっていきたいのかで話は尽きない。そこのところを軸にして雑談も広がってゆく。

途中からオーさんと顔見知りの店のオーナーも加わって、インド旅行の話を興味深く聞いた。日本との文化・習慣の違いに目を丸くしつつ、私は考えた・・・

型にはまっていたなぁ〜 いつの間にか。

境界線を作り、マニュアルを作り、繰り返される馴れ合いの中でぬくぬくと安心していた。

ちょっと気を抜くとこれだ。変わらないものを求めてしまうのが人間の性だと判っているが、私にとってそれはいつか、自分の首を絞めて身動きできなくしてしまう恐れがあるというのに。


ここしばらく忘れかけていた、大切なことを思い出させてくれたオーさんとのひと時。

ガンダーラを夢見たかのような夜。

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