地底都市
2006年5月12日
シートベルト着用サインが点灯する。
順調に水平飛行を続けてきた機体は、まるで氷のスロープを滑るようななめらかさでどんどん高度を下げていく。
小さな四角形に切り取られた外の景色は、夕暮れに少し早い真っ青な空。その下にはどこまでも続く雲海が広がっていた。
よく見ると、小さな機影がでこぼこした雲の表面に投影されている。その周りにまるでオーラのように、虹色の光の輪ができていた。山の頂上で現れるブロッケン現象にそっくり。もしかしたら、けっこう珍しいものを見ることができたんじゃないだろうか・・・?
そんな光景のせいで、私は自分が乗っている飛行機が何かに守られているような、または不思議な力によってどこか特別な場所に導かれているような妄想を抱く。
そうだ、そうなんだ。
私には使命がある。
それを果たしに、どうしても行かねばならぬ場所がある。
眼下の雲が、みるみる近づいてくる。
澄んだ青空とまばゆい太陽の光に、別れを告げよう。
やるべきことを成し終えたら
その時はこの何十倍もの速さでまた、浮上すればいい。
さよなら、住み慣れた世界よ。
目指すは地底都市だ。
10、9、8、7・・・・・
ひと呼吸ごとに真っ白い地面がせり上がってくる
6、5、4、3・・・・・
最後にもう一度だけ、頭上に細くかろうじて見える青空を追う
2、1・・・・
息を止める
目の前は氷の粒
真っ白い世界
信じられないスピードだ・・・・・
そして
不意に現れたのは灰色の世界
緑の若葉も
段々畑も
静脈のような細い道も
吹けば飛ぶような小さな家々も
澱んだ水中に深く沈んでいる
ここが、しばし我が身を窶す場所
Welcome to Tokyo
順調に水平飛行を続けてきた機体は、まるで氷のスロープを滑るようななめらかさでどんどん高度を下げていく。
小さな四角形に切り取られた外の景色は、夕暮れに少し早い真っ青な空。その下にはどこまでも続く雲海が広がっていた。
よく見ると、小さな機影がでこぼこした雲の表面に投影されている。その周りにまるでオーラのように、虹色の光の輪ができていた。山の頂上で現れるブロッケン現象にそっくり。もしかしたら、けっこう珍しいものを見ることができたんじゃないだろうか・・・?
そんな光景のせいで、私は自分が乗っている飛行機が何かに守られているような、または不思議な力によってどこか特別な場所に導かれているような妄想を抱く。
そうだ、そうなんだ。
私には使命がある。
それを果たしに、どうしても行かねばならぬ場所がある。
眼下の雲が、みるみる近づいてくる。
澄んだ青空とまばゆい太陽の光に、別れを告げよう。
やるべきことを成し終えたら
その時はこの何十倍もの速さでまた、浮上すればいい。
さよなら、住み慣れた世界よ。
目指すは地底都市だ。
10、9、8、7・・・・・
ひと呼吸ごとに真っ白い地面がせり上がってくる
6、5、4、3・・・・・
最後にもう一度だけ、頭上に細くかろうじて見える青空を追う
2、1・・・・
息を止める
目の前は氷の粒
真っ白い世界
信じられないスピードだ・・・・・
そして
不意に現れたのは灰色の世界
緑の若葉も
段々畑も
静脈のような細い道も
吹けば飛ぶような小さな家々も
澱んだ水中に深く沈んでいる
ここが、しばし我が身を窶す場所
Welcome to Tokyo
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