坊主 イズ ビー アンビシャス!
2006年4月17日
面白い繋がりで、滋賀県の西側にある小さな町の小さなお寺に、仕事をしに行って来た。
家から電車と車を乗り継ぎ約2時間、広い田んぼと数軒の家が集まる中に建つそのお寺に着いた。そこには、私よりも若いご住職と可愛らしい奥様と2人の小さいお子さんが住んでおり、慎ましい広さの境内には都会より少し遅れて今まさに満開を迎えた見事な桜の木があった。雨が続いた後の、久しぶりに晴れ上がった春の空を背に、それは気持ち良さそうに咲き誇っていた。
桜の木の下で思わず立ち止まり感嘆の声を漏らしている私の横で、ご住職も人懐っこい笑顔を見せて言った。
「綺麗でしょう。花がプリップリしている感じです」
うまいこと言うなぁ。本当に、花のひとつひとつに弾けるような瑞々しさがある。まさに幼子のほっぺたのよう、プリプリしている。
仕事は、いくつかの改善すべき点を含みつつ滞りなく終了。ちょうどお昼時になったので、ご住職夫妻と2歳になる娘さんと一緒に近くのカレー屋さんでご飯を食べた。
会ったのは今日が2回目、あとは電話で事務的なやりとりを数回しただけで、ゆっくりとお話できたのは初めて。でも私達はもうすっかり打ち解けてしまい、とても楽しいひと時を過ごした。
お坊さんというと、たいていの人が持つイメージは早朝から深夜まで厳しい修行に明け暮れているといったものだろうけれど、彼らのように結婚して所帯を持ち子供も育てているお坊さんもたくさんいる。
そういうお寺では、地域の人達とのコミュニケーションを積極的に行うことも少なくない。今日のところもそうで、法事の時だけ思い出したように訪れるだけのお寺ではなく、ご近所さんが気軽に足を運び情報交換したり子供達が安心して遊べる場を提供したりすることで、地域もお寺も活性化すればと願っている。
考えて見れば、昔は神社やお寺がごく自然に、集会所のように機能していたんだしなぁ。子供達には寺子屋、大人達には相談所のように。私も子供の頃は、境内が大好きな遊び場だったよ。
宗教だなんて堅苦しいこと子供には判らなくても、生活の中に当たり前に存在していた神社やお寺と接しているうちに、目に見えぬものに手を合わせ敬う気持ちが芽生えるものじゃないだろうか。
そんなことをとりとめもなく話しながら、ご住職はキーマカレーセットを残らずきれいに平らげて、笑いながら言った。
「実は私、バツイチなんですよ」
その風貌とバツイチという言葉のミスマッチに思わず吹き出しそうになりながら、本当ですかと目を白黒させてしまった。
お寺の次男として育ったご住職は、実家を離れ別のお寺に養子として入ったものの奥様が浪費家でむちゃくちゃなことになったらしく、離婚してしばらくはそのお寺を1人で守っていたそうだが、良縁を得て今の奥様と再婚し2人のお子様にも恵まれたそうだ。
「朝早く起きてお努めの1つもすればいいんですけれど、何しろ子供中心の生活になってしまって。夜は子供が眠ってからお寺の仕事をしなくちゃいけないからどうしても眠るのが遅いでしょう。全く、ナマクラ坊主ですよ〜」
そう言って丸い頭を撫でるご住職。
その瞳は、やはりどことなく凡人よりも澄んでいるように思えてならなかった。
傍らでは奥様が、リンドウの花のように静かに笑いながら、カレーに飽きて遊び始めた娘を優しく諌めていた。
次に来るのは、7月。
またお会いするのが本当に楽しみだ。
家から電車と車を乗り継ぎ約2時間、広い田んぼと数軒の家が集まる中に建つそのお寺に着いた。そこには、私よりも若いご住職と可愛らしい奥様と2人の小さいお子さんが住んでおり、慎ましい広さの境内には都会より少し遅れて今まさに満開を迎えた見事な桜の木があった。雨が続いた後の、久しぶりに晴れ上がった春の空を背に、それは気持ち良さそうに咲き誇っていた。
桜の木の下で思わず立ち止まり感嘆の声を漏らしている私の横で、ご住職も人懐っこい笑顔を見せて言った。
「綺麗でしょう。花がプリップリしている感じです」
うまいこと言うなぁ。本当に、花のひとつひとつに弾けるような瑞々しさがある。まさに幼子のほっぺたのよう、プリプリしている。
仕事は、いくつかの改善すべき点を含みつつ滞りなく終了。ちょうどお昼時になったので、ご住職夫妻と2歳になる娘さんと一緒に近くのカレー屋さんでご飯を食べた。
会ったのは今日が2回目、あとは電話で事務的なやりとりを数回しただけで、ゆっくりとお話できたのは初めて。でも私達はもうすっかり打ち解けてしまい、とても楽しいひと時を過ごした。
お坊さんというと、たいていの人が持つイメージは早朝から深夜まで厳しい修行に明け暮れているといったものだろうけれど、彼らのように結婚して所帯を持ち子供も育てているお坊さんもたくさんいる。
そういうお寺では、地域の人達とのコミュニケーションを積極的に行うことも少なくない。今日のところもそうで、法事の時だけ思い出したように訪れるだけのお寺ではなく、ご近所さんが気軽に足を運び情報交換したり子供達が安心して遊べる場を提供したりすることで、地域もお寺も活性化すればと願っている。
考えて見れば、昔は神社やお寺がごく自然に、集会所のように機能していたんだしなぁ。子供達には寺子屋、大人達には相談所のように。私も子供の頃は、境内が大好きな遊び場だったよ。
宗教だなんて堅苦しいこと子供には判らなくても、生活の中に当たり前に存在していた神社やお寺と接しているうちに、目に見えぬものに手を合わせ敬う気持ちが芽生えるものじゃないだろうか。
そんなことをとりとめもなく話しながら、ご住職はキーマカレーセットを残らずきれいに平らげて、笑いながら言った。
「実は私、バツイチなんですよ」
その風貌とバツイチという言葉のミスマッチに思わず吹き出しそうになりながら、本当ですかと目を白黒させてしまった。
お寺の次男として育ったご住職は、実家を離れ別のお寺に養子として入ったものの奥様が浪費家でむちゃくちゃなことになったらしく、離婚してしばらくはそのお寺を1人で守っていたそうだが、良縁を得て今の奥様と再婚し2人のお子様にも恵まれたそうだ。
「朝早く起きてお努めの1つもすればいいんですけれど、何しろ子供中心の生活になってしまって。夜は子供が眠ってからお寺の仕事をしなくちゃいけないからどうしても眠るのが遅いでしょう。全く、ナマクラ坊主ですよ〜」
そう言って丸い頭を撫でるご住職。
その瞳は、やはりどことなく凡人よりも澄んでいるように思えてならなかった。
傍らでは奥様が、リンドウの花のように静かに笑いながら、カレーに飽きて遊び始めた娘を優しく諌めていた。
次に来るのは、7月。
またお会いするのが本当に楽しみだ。
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