和歌山プチ旅行〜その1
2006年4月2日
4月か・・・。地元では桜のつぼみがまだまだ固い。というか、ここ数年は開花が昔に比べて早まっているから、以前のペースということか。やっぱり入学式とか新学期というものには桜が似合う。
さて!
31日から1泊2日で行って来ました、和歌山天文台ツアー!
初日、タカの家から車で出発。片道およそ120キロのドライブ。タカはペーパードライバーのため運転は私だけ、途中で休憩しながら高速道路を突っ走り、渋滞に巻き込まれること無くスイスーイと2時間ほどで和歌山市内に到着。
遅いお昼ご飯に和歌山ラーメンを食べようと言うことで、車の中で決めていた「和歌山ラーメンブームの火付け役となった」と言う、老舗のお店に向かった。
10畳くらいの小さな店内に昔ながらを感じさせる年季の入ったテーブルや椅子にが所狭しと並んでいる。そしてもう2時過ぎだというのにお客さんがひしめいていた。5分ほど待って、カウンターの席にちんまりと並んで座る。
ラーメンが来るまで、テーブルに置かれた「早や鮨」(鯖の押し寿司)を食べて待つ。和歌山ラーメンのお店ではこうしてお寿司やゆで卵が並べてあるお店が多く、会計の時に食べた分を自己申請してお金を払うシステムになっている。味は、まあ普通だった。タカはちょっと苦手だったらしく、ひと口で辞退。
さて肝心のラーメンは、とっても美味しかった!好きな味。醤油ラーメンなんだけど、とんこつからしっかりダシを取ってありその臭みがクセになる美味しさ。今まで食べたことのない味だった。ストレート麺はやわらかめで、私は好きだったけれどタカは次に来たら固めにしてもらうと言っていた。でも、味には大満足。
それから、すぐ近くにある和歌山城へ。
天気は上々、青空が広がって気持ちがいい。けれど風は少し冷たくて、城内の桜は5分咲きからほぼ満開まで様々といった感じ。お城をバックに咲き誇る桜の写真を撮った。
それにしても、和歌山市内の道はとても混雑していてお城を見るにも駐車場は行列。ナビがあったから道に迷うことはなかったけれど意外と時間を取られてしまった。日本庭園を眺めたり、侘び寂びの情緒漂うお茶室で抹茶を頂いたりしてから、天守閣に登って展示品を眺めたり写真を撮ったりしているうちに気付けばもう夕方だった。小腹が空いたからもう1軒和歌山ラーメンのハシゴを・・・なんて言ってたけど、メインイベントでもある天文台での7時からの観望会に間に合わなくなりそうになり、慌てて車に乗り込んだ。
市内から約1時間、山間の小さな町を抜け更に奥深くまで車を走らせる。夕陽はどんどん傾き、雲ひとつない青空が夕闇に溶け始めた頃、その天文台は見えてきた。途中、街灯が全く無い山道を登り続け着いたのは6時半頃、危ないとこだった。宿泊施設もあるその天文台に転がり込むようにチェックイン。フロントの人に「お待ちしていました」と言われ、それがすごく実感がこもっていて気恥ずかしかった。ロビーにはすでに観望会に参加する家族が集まっていて、楽しそうに談笑している。
さっそく部屋に案内してもらうと、そこは10畳ほどもある和室。洗面所とトイレ付きでお風呂は大浴場のみ、東側にベランダ南側にテラスがあり、南のテラスには望遠鏡をセットする用具が備え付けてある。ここは別料金(1500円前後)で望遠鏡を借りることができ、その気になれば一晩中でも星を眺めることができるようになっているのだ〜!
部屋の中は清潔で設備もきれい、これで1人4700円(素泊まり)は安いぞ!そして何と・・・この日、泊り客は私達2人だけだった・・・思いがけず、貸切り。
さて、荷物を置きお茶を飲んで一息ついてから、観望会へいざ出発!春とはいえ山の上はまだまだ寒く、手袋をし毛糸の帽子をかぶって真冬の装備だ。丸いドームの天文台は宿泊施設のすぐ裏にあり、もうすっかり日が暮れて真っ暗になった細道を、職員の方に連れられ他の参加者達と一緒にゆっくりと登っていく。ここでも街灯などは一切無くて、職員が持つ小さな懐中電灯の灯りだけが頼りだ。それでも目が慣れてくると、ぼうっと道や建物や人影の濃淡がわかってきた。
そして、見上げる夜空には既にオリオンも北斗七星も煌いている。星の観測にはこれ以上無いと思えるほど、一片の雲も無く空気は澄み切っていた。ああ神様、心から感謝します!
天文台の中に入るとそこには、巨大な望遠鏡がひっそりと出番を待っていた。赤い非常灯だけが点いている部屋の壁に沿って順番に座り、職員さんの説明をしばらく聞いてからいよいよ星を見ることになった。
この日見たのは、全部で5つ。
<シリウス>
青く輝く1等星。眩しいほど輝いて、他の星と比べて圧倒的に明るく大きく見えた。レンズを通して見る宇宙の星はこれが始めてで、何だか不思議な気持ちになった・・・
<ベテルギウス>
赤やオレンジ色に光る星。地球の大気の関係で輪郭が揺らいで見えることもあり、まるで太陽のコロナのように綺麗だった。
<オリオン大星雲>
煙のようにふわっと霞む白いもやの中に、4つの青白く輝く星が。この星雲の中では新しい星が次々と誕生している。この4つ星、誕生してからまだ「たった400万年」しか経っていないんだって・・・・。推定される寿命が1億年ほどらしく、そこから計算するとまだほんの生まれたて、人間で言うと生後1・2日ほどだそう。ああ、人間の・・・・・何という儚さよ。
<土星>
夢にまで見た、土星!!!ついにこの目で、その姿をはっきりと見ることができたのだーーー!!
小さなレンズの中にぽっかりと浮かんだその姿は、まさに、あの土星だった。その輪は意外にも「5時5分前」という急な角度に傾いていて、写真などで何度も何度も目にした輪が水平にかかった土星に見慣れていた私とタカは、その奇妙に(感じられるほど)傾いた姿にちょっとしたカルチャーショックを受けた。そしてその輪の外側寄りに、すーっと1本走る黒いスジ。その、輪にできた溝までくっきりと見ることができ、思わず感嘆のため息が漏れた・・・。ああ、私は今まさに、宇宙空間にぽっかりと浮かぶ太陽系7番目の星を、この目で確かに見ているんだ・・・・。この夜は幸いなことに、地球の大気でぼやけることもなく風もほとんど無かったために、望遠鏡の能力を最大限に活用した状態で見ることができたのだった。ちなみに解像度が足りないため、色まではつかず。真っ白な土星というのもそうそう見られないかも(笑)。
<球状星団>
どの星座にあるんだったか、説明してくれたはずなんだけれど土星の感激に浸りきっていたためちゃんと聞いてなかったからわからず。そして、覗いたレンズの中に見えたのも、消えかかるタバコの煙のようなもやっとした白っぽいだけのものだった。特にインパクト無し。
約2時間の観望会が、こうしてあっという間に終わった。
その頃にはもう体が芯から冷え切ってしまい、足先などはもう感覚が無いほど。でも寒い日の方が、大気が揺らぎづらいのでくっきりと星を見ることができる。確かに、真冬の星空は綺麗だもんね。
それからそそくさと部屋に戻り、とにかくお風呂で体を暖めることにして大浴場に向かった。
そして・・・ここで白状しますが・・・
他に誰も泊り客がいないのをいいことに、2人で男湯に入っちゃいましたっ!!置いてあったモップを、ドアに突っかえ棒にして。
だって・・・
誰もいない大浴場に、1人で入るの恐いんだもーーーん。エヘヘ。
洗い場で、タカと2人で並んで体を洗っているのが何だか可笑しかった。ああ貸切り。ブラボー!!
さて部屋に戻ると、テラスには頼んでおいた望遠鏡が備え付けられていた。使い方はあらかじめ教わってある。これで今夜は、気が済むまで星を眺めていられるのだわ。
いやいやその前に、今度は腹ごしらえだ。素泊まりなので、食事は車で30分ほどのところにあるファミレスまで行かなくては。何しろここは山奥なので、近くには民家しかない。そこまで降りる道には街灯すらない、まさに漆黒の闇夜だ。そして時間はすでに11時過ぎ・・・。宿泊棟から駐車場に行くまでの道などは、足元も見えないほどの暗闇だった。月も新月から2日目だから細過ぎて光を放つことができない。懐中電灯を借りるのを忘れたので、仕方ないから携帯の灯りを頼りに恐る恐る歩いた。ふと見上げると空には、都会では決して見ることのできない満天の星々が。手を繋いでいるタカの顔すら判らないほどの暗闇で、初めてこの星空を堪能できるんだなぁ・・・。改めて、自分が住んでいる都会の明る過ぎる夜を思った。
そんなこんなでファミレスに着いたのはもう真夜中、12時過ぎ。
とにかく腹ペコだったのでさっと注文してじっと待ち、無言のまま嵐のように食べてぱっと店を出た。
そして部屋に戻り、2人とも上着も脱がずにテラスに出た。望遠鏡をセットして楽しみにしていた星を探し始める。
それは・・・・
この時期、日没とともに東の空から上って来る、木星。
だいたいの位置さえ判っていれば、ひと目でそれだと判るほど木星は他の星に比べてひときわ明るい。
とは言え、見るのも触るのも初めての望遠鏡。それはよくある家庭用の白くて長い筒状のものではなく、黒く太い見慣れない形のものだった。
木星を探し、焦点を合わせるのはタカが引き受けてくれた。彼は普段、仕事がら顕微鏡を使っている。それで見るものはナノサイズだから大きさでは正反対だけれど、こういう機械の操作には手馴れているし、何よりいじるのがとっても楽しそうだった。
そして、ものの10分ほどで見事に木星の姿をレンズの中に捕らえた。慎重にピントを合わせ、興奮しながら「テハヌー、すごいよ!」と笑うタカ。
覗いたレンズには・・・・
赤道付近にある2本の縞模様がはっきりと見分けられる、まさに木星の姿がそこにあった!!
タカ、すごいよ!
視界の狭いレンズを覗き込み、目当ての星を見つけ出す作業は素人にとって決して簡単ではない。下手をすると1時間も試行錯誤を繰り返し、まだ見つけられないってこともあり得る。
何だか惚れ直しちゃった。
その木星の姿は、何だか神々しくさえ思えた。更に驚いたことに、木星を挟んで斜め上から斜め下にかけて対角線上に2個ずつ、計4個の名も知らぬ星が一直線に並んでいたのだった。
それらは、肉眼では全然見えない。
ああこんなことが・・・。
私が毎日、笑ったり泣いたり細々としたことで一喜一憂している間にも・・・。
無限に広がるかのように思える宇宙空間には、見える星以外に、見えないけれど確かに存在する無数の星々が冷然と光っているなんて・・・。
自分達の立てる音とお互いの声だけしか、聞こえる音がない夜。
息を殺して見た太陽系の彼方。
タカとふたり、言葉少なに気が済むまで望遠鏡を覗き込んでから、3時過ぎになってようやく眠りについた。
生きていること
今まさにここでこうしていること
私が私として
この命を終えることができたら
その時には
あの暖かな故郷へ
帰ろう
さて!
31日から1泊2日で行って来ました、和歌山天文台ツアー!
初日、タカの家から車で出発。片道およそ120キロのドライブ。タカはペーパードライバーのため運転は私だけ、途中で休憩しながら高速道路を突っ走り、渋滞に巻き込まれること無くスイスーイと2時間ほどで和歌山市内に到着。
遅いお昼ご飯に和歌山ラーメンを食べようと言うことで、車の中で決めていた「和歌山ラーメンブームの火付け役となった」と言う、老舗のお店に向かった。
10畳くらいの小さな店内に昔ながらを感じさせる年季の入ったテーブルや椅子にが所狭しと並んでいる。そしてもう2時過ぎだというのにお客さんがひしめいていた。5分ほど待って、カウンターの席にちんまりと並んで座る。
ラーメンが来るまで、テーブルに置かれた「早や鮨」(鯖の押し寿司)を食べて待つ。和歌山ラーメンのお店ではこうしてお寿司やゆで卵が並べてあるお店が多く、会計の時に食べた分を自己申請してお金を払うシステムになっている。味は、まあ普通だった。タカはちょっと苦手だったらしく、ひと口で辞退。
さて肝心のラーメンは、とっても美味しかった!好きな味。醤油ラーメンなんだけど、とんこつからしっかりダシを取ってありその臭みがクセになる美味しさ。今まで食べたことのない味だった。ストレート麺はやわらかめで、私は好きだったけれどタカは次に来たら固めにしてもらうと言っていた。でも、味には大満足。
それから、すぐ近くにある和歌山城へ。
天気は上々、青空が広がって気持ちがいい。けれど風は少し冷たくて、城内の桜は5分咲きからほぼ満開まで様々といった感じ。お城をバックに咲き誇る桜の写真を撮った。
それにしても、和歌山市内の道はとても混雑していてお城を見るにも駐車場は行列。ナビがあったから道に迷うことはなかったけれど意外と時間を取られてしまった。日本庭園を眺めたり、侘び寂びの情緒漂うお茶室で抹茶を頂いたりしてから、天守閣に登って展示品を眺めたり写真を撮ったりしているうちに気付けばもう夕方だった。小腹が空いたからもう1軒和歌山ラーメンのハシゴを・・・なんて言ってたけど、メインイベントでもある天文台での7時からの観望会に間に合わなくなりそうになり、慌てて車に乗り込んだ。
市内から約1時間、山間の小さな町を抜け更に奥深くまで車を走らせる。夕陽はどんどん傾き、雲ひとつない青空が夕闇に溶け始めた頃、その天文台は見えてきた。途中、街灯が全く無い山道を登り続け着いたのは6時半頃、危ないとこだった。宿泊施設もあるその天文台に転がり込むようにチェックイン。フロントの人に「お待ちしていました」と言われ、それがすごく実感がこもっていて気恥ずかしかった。ロビーにはすでに観望会に参加する家族が集まっていて、楽しそうに談笑している。
さっそく部屋に案内してもらうと、そこは10畳ほどもある和室。洗面所とトイレ付きでお風呂は大浴場のみ、東側にベランダ南側にテラスがあり、南のテラスには望遠鏡をセットする用具が備え付けてある。ここは別料金(1500円前後)で望遠鏡を借りることができ、その気になれば一晩中でも星を眺めることができるようになっているのだ〜!
部屋の中は清潔で設備もきれい、これで1人4700円(素泊まり)は安いぞ!そして何と・・・この日、泊り客は私達2人だけだった・・・思いがけず、貸切り。
さて、荷物を置きお茶を飲んで一息ついてから、観望会へいざ出発!春とはいえ山の上はまだまだ寒く、手袋をし毛糸の帽子をかぶって真冬の装備だ。丸いドームの天文台は宿泊施設のすぐ裏にあり、もうすっかり日が暮れて真っ暗になった細道を、職員の方に連れられ他の参加者達と一緒にゆっくりと登っていく。ここでも街灯などは一切無くて、職員が持つ小さな懐中電灯の灯りだけが頼りだ。それでも目が慣れてくると、ぼうっと道や建物や人影の濃淡がわかってきた。
そして、見上げる夜空には既にオリオンも北斗七星も煌いている。星の観測にはこれ以上無いと思えるほど、一片の雲も無く空気は澄み切っていた。ああ神様、心から感謝します!
天文台の中に入るとそこには、巨大な望遠鏡がひっそりと出番を待っていた。赤い非常灯だけが点いている部屋の壁に沿って順番に座り、職員さんの説明をしばらく聞いてからいよいよ星を見ることになった。
この日見たのは、全部で5つ。
<シリウス>
青く輝く1等星。眩しいほど輝いて、他の星と比べて圧倒的に明るく大きく見えた。レンズを通して見る宇宙の星はこれが始めてで、何だか不思議な気持ちになった・・・
<ベテルギウス>
赤やオレンジ色に光る星。地球の大気の関係で輪郭が揺らいで見えることもあり、まるで太陽のコロナのように綺麗だった。
<オリオン大星雲>
煙のようにふわっと霞む白いもやの中に、4つの青白く輝く星が。この星雲の中では新しい星が次々と誕生している。この4つ星、誕生してからまだ「たった400万年」しか経っていないんだって・・・・。推定される寿命が1億年ほどらしく、そこから計算するとまだほんの生まれたて、人間で言うと生後1・2日ほどだそう。ああ、人間の・・・・・何という儚さよ。
<土星>
夢にまで見た、土星!!!ついにこの目で、その姿をはっきりと見ることができたのだーーー!!
小さなレンズの中にぽっかりと浮かんだその姿は、まさに、あの土星だった。その輪は意外にも「5時5分前」という急な角度に傾いていて、写真などで何度も何度も目にした輪が水平にかかった土星に見慣れていた私とタカは、その奇妙に(感じられるほど)傾いた姿にちょっとしたカルチャーショックを受けた。そしてその輪の外側寄りに、すーっと1本走る黒いスジ。その、輪にできた溝までくっきりと見ることができ、思わず感嘆のため息が漏れた・・・。ああ、私は今まさに、宇宙空間にぽっかりと浮かぶ太陽系7番目の星を、この目で確かに見ているんだ・・・・。この夜は幸いなことに、地球の大気でぼやけることもなく風もほとんど無かったために、望遠鏡の能力を最大限に活用した状態で見ることができたのだった。ちなみに解像度が足りないため、色まではつかず。真っ白な土星というのもそうそう見られないかも(笑)。
<球状星団>
どの星座にあるんだったか、説明してくれたはずなんだけれど土星の感激に浸りきっていたためちゃんと聞いてなかったからわからず。そして、覗いたレンズの中に見えたのも、消えかかるタバコの煙のようなもやっとした白っぽいだけのものだった。特にインパクト無し。
約2時間の観望会が、こうしてあっという間に終わった。
その頃にはもう体が芯から冷え切ってしまい、足先などはもう感覚が無いほど。でも寒い日の方が、大気が揺らぎづらいのでくっきりと星を見ることができる。確かに、真冬の星空は綺麗だもんね。
それからそそくさと部屋に戻り、とにかくお風呂で体を暖めることにして大浴場に向かった。
そして・・・ここで白状しますが・・・
他に誰も泊り客がいないのをいいことに、2人で男湯に入っちゃいましたっ!!置いてあったモップを、ドアに突っかえ棒にして。
だって・・・
誰もいない大浴場に、1人で入るの恐いんだもーーーん。エヘヘ。
洗い場で、タカと2人で並んで体を洗っているのが何だか可笑しかった。ああ貸切り。ブラボー!!
さて部屋に戻ると、テラスには頼んでおいた望遠鏡が備え付けられていた。使い方はあらかじめ教わってある。これで今夜は、気が済むまで星を眺めていられるのだわ。
いやいやその前に、今度は腹ごしらえだ。素泊まりなので、食事は車で30分ほどのところにあるファミレスまで行かなくては。何しろここは山奥なので、近くには民家しかない。そこまで降りる道には街灯すらない、まさに漆黒の闇夜だ。そして時間はすでに11時過ぎ・・・。宿泊棟から駐車場に行くまでの道などは、足元も見えないほどの暗闇だった。月も新月から2日目だから細過ぎて光を放つことができない。懐中電灯を借りるのを忘れたので、仕方ないから携帯の灯りを頼りに恐る恐る歩いた。ふと見上げると空には、都会では決して見ることのできない満天の星々が。手を繋いでいるタカの顔すら判らないほどの暗闇で、初めてこの星空を堪能できるんだなぁ・・・。改めて、自分が住んでいる都会の明る過ぎる夜を思った。
そんなこんなでファミレスに着いたのはもう真夜中、12時過ぎ。
とにかく腹ペコだったのでさっと注文してじっと待ち、無言のまま嵐のように食べてぱっと店を出た。
そして部屋に戻り、2人とも上着も脱がずにテラスに出た。望遠鏡をセットして楽しみにしていた星を探し始める。
それは・・・・
この時期、日没とともに東の空から上って来る、木星。
だいたいの位置さえ判っていれば、ひと目でそれだと判るほど木星は他の星に比べてひときわ明るい。
とは言え、見るのも触るのも初めての望遠鏡。それはよくある家庭用の白くて長い筒状のものではなく、黒く太い見慣れない形のものだった。
木星を探し、焦点を合わせるのはタカが引き受けてくれた。彼は普段、仕事がら顕微鏡を使っている。それで見るものはナノサイズだから大きさでは正反対だけれど、こういう機械の操作には手馴れているし、何よりいじるのがとっても楽しそうだった。
そして、ものの10分ほどで見事に木星の姿をレンズの中に捕らえた。慎重にピントを合わせ、興奮しながら「テハヌー、すごいよ!」と笑うタカ。
覗いたレンズには・・・・
赤道付近にある2本の縞模様がはっきりと見分けられる、まさに木星の姿がそこにあった!!
タカ、すごいよ!
視界の狭いレンズを覗き込み、目当ての星を見つけ出す作業は素人にとって決して簡単ではない。下手をすると1時間も試行錯誤を繰り返し、まだ見つけられないってこともあり得る。
何だか惚れ直しちゃった。
その木星の姿は、何だか神々しくさえ思えた。更に驚いたことに、木星を挟んで斜め上から斜め下にかけて対角線上に2個ずつ、計4個の名も知らぬ星が一直線に並んでいたのだった。
それらは、肉眼では全然見えない。
ああこんなことが・・・。
私が毎日、笑ったり泣いたり細々としたことで一喜一憂している間にも・・・。
無限に広がるかのように思える宇宙空間には、見える星以外に、見えないけれど確かに存在する無数の星々が冷然と光っているなんて・・・。
自分達の立てる音とお互いの声だけしか、聞こえる音がない夜。
息を殺して見た太陽系の彼方。
タカとふたり、言葉少なに気が済むまで望遠鏡を覗き込んでから、3時過ぎになってようやく眠りについた。
生きていること
今まさにここでこうしていること
私が私として
この命を終えることができたら
その時には
あの暖かな故郷へ
帰ろう
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